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  • 執筆者の写真音まち千住の縁

パーティー「フィリパピポ!! ザ・ファイナル」にむけて

更新日:2019年1月24日

フィリピンからの、ひとりひとり マキララ ―知り、会い、踊る―



音楽、食べもの、飾りつけ、そして誰でも包み込んでしまうホスピタリティ。そんなフィリピンの文化からインスピレーションを受けたパーティープログラム、それが「フィリパピポ!!」だ。

初回は2016年9月。蓋を開けてみると、会場の誰もが「パピポ(パーティー・ピーポー)」となって踊り出してしまうほどの盛り上がりで、終演後には参加者同士が思わず「また来年!」と再会を約束する光景も見られた。そんな熱量を引き継いで、昨年に続き今冬も開催が決定した。この企画を担当してきた森本菜穂とともに、その醍醐味を探ってみよう。

*「マキララ」はフィリピンの言葉で「知り合う」


「フィリピンからの、ひとりひとり マキララ ―知り、会い、踊る―」より フィリパピポ!!(2016年)

思いがけない出会いに乾杯!


 「フィリパピポ!!」は、フィリピン・コミュニティの人びとが、普段教会や自宅などで開くパーティーにインスピレーションを受け始まった企画である。「誰でも大歓迎!」で人を集め、フィリピン流パーティーのエッセンスをこれでもかと投入した「フィリパピポ!!」が目指すのは、さまざまな味わいを持った、まだ見ぬ人びと、まだ見ぬ文化との出会いの場だ。

 はじまりは、2015年の早春。足立区梅島にあるカトリック梅田教会に集うフィリピン・コミュニティとの出会いだった。「フィリパピポ!!」発起人で、現在は音まちスタッフの筆者は、当時まだ東京藝術大学の千住キャンパスで学ぶ大学院生。「ダンスが大好きな人たちが集まってるよ!」という情報を耳にして、「その人たちと友達になりたい!」とすぐさま飛んでいった。それから、信者ではないのに聖歌隊に参加したり、行事のお手伝いをさせてもらったりとお世話になりながら通い続け、3年が経つ。


ダンスしてなくてもOKな「ダンスタイム」

 

 ミサに通うフィリピン人は中年の女性がほとんど。実は、東京都に暮らすフィリピン人の約8割が女性だ。足立区は東京23区内でフィリピン人の居住者数が最も多い。毎週日曜のミサ終了後、彼女たちからダンスを引き出そうと、北千住のキャンパスからスピーカーやマイクをせっせと運び、ミサ終了後に「ダンスタイム」を開いた。リクエストを受けて次々と曲を流すと、教会のホールは笑い声があふれ、チャーミングなダンスが華咲くディスコになった。彼女たちの多くは、母国でダンスや歌のレッスンを受け、80年代から90年代にかけてエンターテイナー・ビザで来日した、いわばその道のプロなのだ。

 しかし、彼女たちの最大の魅力は包みこむようなあたたかさ。まるで溶き卵みたいなゆるやかさで、それぞれの過ごし方を尊重しながら、ともに居る場をつなぐのが得意なのだ。歌っている人、ごはんを食べている人、自撮り(セルフィー)に夢中の人、見ている人、みんながその場の参加者になる。無理やり混ぜないこと。これが彼女たちから私が学んだ、さまざまな人が集まるパーティーの最大の秘訣かもしれない。


いろんな味が混ざり合ってうまれる風景


 フィリピンスタイルのパーティーに行くと、大きなお皿を渡され、ズラリと並んだ料理から好きなものをどうぞ!と促される。丁寧に仕込まれたいろいろな料理を、あれもこれもと気の向くままに取っていると、いつの間にか肉の煮込み、揚げた魚、ビーフン炒め、春巻き、ごはん、豆のスープ、フルーツなどが皿をモリモリと埋め尽くしている。そして、ひと通り味見した後、それを混ぜながら食べる。すると、それぞれに美味しい料理が出会って、想像していなかったような味わいに。食べ終わる頃には皿の上で、いろんな食材の味や色が渾然一体となって……。これって、なんだか「フィリパピポ!!」の風景みたいだな、と思う(ちょっと無理やり?)。魅力的な人びとが集まるだけでも素敵だが、それぞれに関わり合ってもらうことでパーティーがさらに面白みを増すのだ。



 いろいろな人と出会っていく期間が料理の「仕込み」。仕込みを経て当日集まった人びとが色とりどりの「料理」だ。会場を彩るフィリピン流のパーティー・テクニックは、その料理を引き立てる「盛りつけ」や、味に変化を与える「スパイス」のようなものだろうか。

 会場を華やかにする装飾は、病院に勤務するフィリピン人女性につくり方を教わった。彼女は夜勤の間に、院内を飾る紙製のハートや花のデコレーションをせっせとつくっているという。みんなで盛り上がれるズンバタイムや、ルールの中で自分を表現するドレスコードもフィリピン人女性たちからのアイデア。「これ何?」「こっちも食べてごらん!」と、会話のきっかけになる美味しい料理も欠かせない。


それぞれのリアルな「いま」を持ち寄って


 舞台では、パフォーマンスも次々に披露される。出演は、「文化背景の違いを超えて訴えかける何かがある人」を見込んでお願いし、彼らがいま一番やりたいことをやってもらうことにしている。なので、パフォーマンスは国際交流にありがちな、伝統的なフィリピン文化の披露にとどまらない。

 昨年のフィリピ―ナたちの「気分」は、アメリカの人気テレビ番組「ハワイ5-0」の音楽に乗ったタヒチアン・ダンスだった(しかも、最後のポーズの掛け声は「オレ!」だった)。引越しの依頼者(私)と、引越し業者のアルバイトとして出会い、出演を依頼したラッパー MC NAM(ナム)は、ボート難民としてベトナムから日本に移住した自身の両親らへの思いを歌った。一方で、フィリピンルーツをもつ小学生の女の子は、憧れの学園生活を描いた「少女漫画系」とも言うべき自作のラップを披露した。


 日本に暮らすいろいろな外国人の方々がそれぞれのリアルな「いまの気分」を持ち寄って、一緒に楽しんでくれるパーティーとなればと願い、企画を進めている。今年知り合った、葛飾区のエチオピア人コミュニティのみなさんにも参加を呼びかけ中だ。



 3年間の集大成となる「フィリパピポ!! ザ・ファイナル」は、2019年2月16日(土)、東京藝術大学 千住キャンパスで開催。とっておきのおしゃれに身を包んで、新しい素敵な出会いに期待して、あなたをお待ちしています。

(森本菜穂)


写真:冨田了平

 

【2018年11月発行号掲載】

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