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  • 執筆者の写真音まち千住の縁

イミグレーション・ミュージアム・東京



「国の匂い」について考えたことがあるだろうか。

ある韓国人留学生は日本の畳の匂いから、宇多田ヒカルを思い浮かべるという。

その発想から発展し、匂いをモチーフにした作品が、

音まちの「イミグレーション・ミュージアム・東京(IMM)」のスタートだった。

外国の人々は日本のいろいろな匂いを嗅いで、何を思い浮かべただろう。

異なる文化に暮らしているからこそ気づく

小さな違和感をアートの手法で展示するのがIMMだ。


 今年は、在留外国人の日常のひとこまに寄り添う、そんな作品が多い。足立区に住むフィリピンの人たちの情熱あふれる言動に圧倒された体験から生まれたラブレター作品。母国語と日本語の聞き間違いから生まれたエピソードを映像化した作品では、フッと笑ってしまうかもしれない。北千住駅東口の「TDU」と光っているビルの正体がいまだわからないというインドネシア人や、路地を冒険して見つけた古着屋を嬉しそうに紹介する中国人の思いを地図に落とし込んだ作品は、テーブルを囲んでの「北千住多国籍会議」と称した井戸端会議に、ぜひ来場者のみなさんも参加してほしい。

 すぐ隣で同じ時間を共有しているはずなのに、私たちが意識することのない、外国人の「普段着のできごと」に触れる--日常と異文化の境界線を綱渡るIMMのささやかな挑戦。



カトリック梅田教会 訪問記

異文化交流でミイラ取りがミイラに!?


こんにちは。東京藝術大学の森本菜穂です。大学院の研究の一環で、異文化交流に興味があり、IMMに参加しています。今年の春、梅島にあるカトリック梅田教会に伺い、「こちらに集まるフィリピン人の方々の音楽やダンスとの関わりに興味があるのですが」とお伝えしたところ、荒川神父にご快諾いただき、毎週通ってみることになりました。



5月3日

今日は教会でのバザーに音楽を添える。万全の体制で挑もうと、DJをしている同級生に来てもらった。80年代のダンスナンバーを中心に選曲すると、数人の女性が集まって、音楽にあわせて好きなように体を動かすダンスから始まり、次第にリップシンクやセルフィーなども盛り込まれ賑やかに。最後はリクエストの”マカレナ”。楽しみ上手なフィリピーナたちに圧倒された。


5月10日

今週も音楽を持ち込んでみる。前回たくさん踊ってくれた人たちから積極的に曲のリクエストを受ける。フラダンスの動画を見ながら踊りたいというので用意すると、5人くらい集まってきて踊りだす。「どんなダンスでも、踊りたいと思ったら動画を見て練習するのよ」


5月17日

今週はカラオケもできるようにとプロジェクターを用意。ホールの壁に歌詞を投影した。カラオケとなると、集まってくる人たちがちょっと変わってくる。40代くらいのダンスが大好きなお姉様たちだけではなく、大学生も、こどもたちも歌ってくれた。


5月24日

毎週スピーカーやプロジェクターなどの機材をどっさり持ち込んで通っているので、神父さんに「あんたらカラオケ屋さんか」と言われてしまった。確かに、教会の人々のペースに巻き込まれっぱなしである。今日はラテンエクササイズのズンバが大盛り上がり。汗だくになって踊り続けていた。みな、美意識が高い。


6月7日

教会で初聖体という行事があり、その後パーティーがあるので大きな音を出す活動は控えてほしいと伝えられた。パーティーの料理を分けてもらって食べた。スパゲッティのソースは、やはりジョリビーのもののように甘めで、小学校給食で出されたソフト麺を思い出した


6月14日

プロジェクター2台を持参し、1台をパソコンと、もう1台をビデオカメラとつなぎ、撮った映像がリアルタイムに映し出されるようにした。こどもたちがまず集まり、ヒップホップの練習をするがなかなかうまくできない。その後、いつものダンス好きお姉様たちがズンバを流すと、ヒップホップに挫折したこどもたちもこれならできると一緒に踊り始めた。


6月21日

ミサが始まる少し前に教会に着くと、教会学校の活動で聖書に登場する言葉や教えを学ぶためのゲームがおこなわれていた。参加してくださいと促され、キリスト教徒ではないので、と断ろうとしたが、こどもたちに「来て来て」と言われるとちょっと嬉しくて結局参加してしまった。


6月28日

しんじゅくアートプロジェクトの海老原さんと魏さんが来てくださった。神父さんも交えて多文化共生についてお話しすることができた。さまざまな視点で多分化を見つめ、関わっている方がいるということを再確認し、IMMの役割について考えさせてれた。


7月5日

梅田教会では毎年恒例だというハロハロの販売のお手伝いを頼まれた。あずき、寒天、芋、甘く煮たバナナなどにかき氷とプリンを乗せミルクをかけたもので、見た目も味も優しかった。肌寒い日だったので売れ行きはイマイチ。活動後、ブロック(街区)内をマリア像が手渡されていくフィリピン系カトリックの風習、ブロック・ロザリーに参加させていただいた。


7月12日

ハロハロ販売、第2週目。暑かったのでよく売れた。トッピングがもともと甘いので最後にかける砂糖の量を少なめにすると、「それじゃ全然甘くなくて、売れないよ!」と指導が入る。暑くて氷がすぐに溶けてしまうが、それをスプーンで救って飲むのがハロハロの食べ方らしい。


7月19日

いつものようにミサの前に教会に着くと、教会の中心メンバーの女性にいきなり、「ミサで使うスライドがうまく使えないから助けてほしい」と頼まれる。状況が掴めないまま、英語の賛美歌の歌詞を入力し、ミサの進行に合わせてスライドを送り、なんとか乗り切った。「ありがとう」といろんな人に肩を叩かれて、嬉しかった。


7月26日

先週の流れで聖歌隊に誘われ、いつもより早く到着し一緒に練習した。梅田教会の聖歌隊は4人ほどしかいないが、それぞれの声がとてもパワフルだ。カトリック信者でもない私が聖歌隊で歌うことになるなんて、3ヶ月前には全く予想していなかった。流れに身を任せた先に何があるのだろう、と思って関わってきたひとまずの成果と言えるだろうか。教会の人々に受け入れてもらってここまで来たが、今後この関係性を基盤に新しい風景を生み出していきたいと思う。やっと、その準備が整ってきたと感じる。

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