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執筆者の写真音まち千住の縁

熱タイ音楽隊の一週間 |だじゃれ音楽研究会


絵日記:小日山拓也



だじゃれ音楽研究会(通称「だじゃ研」)が自ら世界へ飛び出した、2015年のタイ滞在を振り返りタイ!


 音楽による国際交流は、世界各地、いろいろな場面で行われている。しかし、「だじゃれ音楽」による国際交流を試みているのは、世界は広しといえど、足立区千住で活動している「野村誠 千住だじゃれ音楽祭」くらいではないだろうか。言語の共有が難しい海外の人々と一緒に、だじゃれと音楽を媒介として交流することは、果たして可能なのだろうか。そして、それは一体何を生み出すのだろうか。

 2011年より展開している、「野村誠 千住だじゃれ音楽祭」。だじゃれと音楽が結びついた「だじゃれ音楽」を公募で集まった「だじゃれ音楽研究会」(通称「だじゃ研」)のメンバーが主体となって探求している。3年目からは、国際的な展開を迎え、インドネシアから作曲家のメメット・チャイルル・スラマットさん、タイから民族音楽学者のアナン・ナルコンを招聘し、各国の言語・文化・音楽を取り入れた新たなかたちのだじゃれ音楽を発表するコンサートを実施。2014年には、1010人の演奏者を公募した参加型のコンサート「千住の1010人」を足立市場で開催し、メメットさん、アナンさんに新曲を委嘱した。

 そして迎えた、2015年。より双方向的なかたちでの国際交流をはかるため、今度はこちら側のメンバーが東南アジアに伺おう、という運びとなった。国際交流基金の助成を得て、作曲家の野村誠さん、だじゃ研メンバー、小鼓奏者の小川実加子さん。箏奏者の松澤佑沙さん、映像の甲斐田祐輔さんとともに、年末の12月25日から31日まで、タイ・バンコクを巡るツアーを敢行した。

 バンコクでは、さまざまな人々と、さまざまな会場や形態でコラボレーションを行った。博物館のエントランスで現地の若いミュージシャンたちとのセッション、こどもと音楽家の共同作曲によるオペラ作品への参加、タイの伝統的な打楽器をつくっている村の見学、伝統音楽教育を専攻する大学生とのワークショップ、ライブハウスにて飛び入りのセッション大会、伝統的な寺院に派手なプロジェクションマッピングが施されたカウントダウンコンサートの見学、などなど……。旅の様子はだじゃ研メンバーの小日山拓也さんによる絵日記で味わっていただきたい。

 濃密な一週間を過ごし、大晦日に帰国した後、練習を重ね、タイでの経験を報告するレクチャー&コンサート「熱タイ音楽隊の一週間」を2月21日に開催。こどもオペラの一節や、大学生に教わったタイ伝統音楽のリズムパターンなどをもとに、だじゃ研によるオリジナルのアレンジを加えた演目を発表した。

 この壮大なプロジェクトについてひと通り振り返ってみた後、もう一度冒頭の問いに立ち返ってみたい。だじゃれ音楽による国際交流は、果たして可能なのだろうか。そして、それは何を生み出すのだろうか。

 片言の英語と身振り手振りで、「だじゃれ音楽」の歌詞の意味を説明してみる。その意味が完全に理解できなくても、その言葉を響きとして楽しんでみる。そして、とにかく一緒にその場で何かをやってみる。その結果、西洋楽器を専攻しているタイの大学生が「ケロ」と「リン」輪唱をする「ケロリン唱」を歌ったり、通りがかりにコンサートを聴きに来たお客さんが小鼓のリズムパターンを習得できる「すっぽんぽん体操」を踊ったり、帰国後には逆に私たちがタイの村祭りのリズムを見よう見まねで演奏、アレンジしてみたり……、といった不思議な光景が次々と生まれていった。そこでは、伝統文化を教え合い相互に理解し合うような大文字の国際交流ともまた違った、緩やかで豊かな交流の場が生まれていたようだ。それはきっと、だじゃれ音楽が持つ、意味の飛躍と響きの魔術によってもたらされたものに違いない。

 2016年の年末は、インドネシアのジョグジャカルタを訪問。新たな出会いに胸を躍らせながら、だじゃ研は、音楽による国際交流の可能性を押し広げている。


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