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執筆者の写真音まち千住の縁

千住のシャボン玉、今年は足立市場で開催



あなたは、1500万個のシャボン玉の海にひたったことがあるだろうか。

幼いころ、誰もが一度は遊んだことのあるシャボン玉。

光を七色に写し、風に揺られて空中に飛んでいく。


 大巻伸嗣(現代美術家)の作品である《Memorial Rebirth》は、シャボン玉を1分間に最大1万個生み出す装置を並べて、無数のシャボン玉で、見慣れたまちを一瞬にして光の風景へと変貌させる。国内のみならず海外でも話題を呼ぶこの作品、実は足立では「メモリバ」と呼ばれ、毎年、千住の地域から地域へとリレーのバトンを手渡すように参加者の輪を広げて、今秋で5回目の開催を数える。

 今年の舞台は、足立市場。昼と夜の2部制で、昼は「しゃボンおどり」、夜はアート作品としての幻想的な姿を見せる。昨年に引き続き屋台も加わり、これまでの集大成とも言える一日となりそうだ。「音まち」のスタッフとして今年の「メモリバ」のメイン担当を務め、東京藝術大学千住キャンパスに通う川添咲(かわぞえさき)さん(音楽環境創造科)は、「普通に大学に通っているだけでは出会えない、いろんな世代の人と関わる経験ができる『メモリバ』は、これまで地域活動に熱心だった人はもちろん、それ以外の新しい人も関われるのがいいところ。そういう人がもっと生まれると嬉しい」と準備にこめる思いを語る。

多くの市民のエネルギーで支えられている「メモリバ」。もうひとりの縁の下の力持ちが、マグロの仲卸として足立市場で働く田草川紘一(たくさがわこういち)さん。これまでもさまざまなイベントを市場で開催してきた「音まち」にとって、不可欠なサポーターだ。「今年の『メモリバ』の大きな夢って何だろう」と期待を膨らませる彼は、「『メモリバ』って、すごく力がある作品だから、まずは参加者として、市場の仲間たちにも見てもらいたい」と語る。


 千住で「メモリバ」をはじめて開催したのは、いろは通り商店街(2012年3月)。早春の雨の中、色とりどりのレインコートに身を包んだ近所のこどもや集まった人々の温もりのうちに、かつての商店街の賑わいの記憶がよみがえった。

 同年11月には、千住1丁目から5丁目までの千住五町会がバトンを受け継ぎ、千寿本町小学校の校庭が舞台となった。このとき「しゃボンおどり」が誕生。次々と生まれるシャボン玉を追いかけたりつかまえたりするオリジナルの振付けは、地元の舞踊の先生と、東京藝術大学出身の若手アーティストグループ「くるくるチャーミー」がともにつくりあげたものだ。校庭に立つ大きなクスノキを囲み、シャボン玉に包まれながら踊る、世代を超えたひとつの輪ができた。

 3回目からは北千住駅を西から東へ越えて縁が広がった。千寿城東小学校では、はじめて「夜のメモリバ」を開催(2013年10月)。前年、東口に新キャンパスができたばかりの東京電機大学の協力を得て、千住で撮った写真が夜の校庭に映し出され、シャボン玉を彩った。一方、「音まち」のサポーターたちがまちを歩いて言葉を集め、「しゃボンおどり」に千住らしい歌詞がつけられた。

 翌年11月は、地元で「太郎山公園」と呼ばれる千住旭公園で実施。各地域の小学校で「しゃボンおどり」の練習を重ね、すっかり振付けや歌を覚え、率先して輪の中心で踊るこどもたちも。シャボン綿菓子や千住名物ねぎま鍋など、地域手づくりの屋台も初登場。また、この回からは、シャボン玉の装置を操作する地元有志のチームが結成され(この夏、「大巻電機K.K.」とチーム名が決定)、千住の「メモリバ」は本格的な市民運営の第一歩を踏み出した。



 地域の温かなつながりに育まれ、回を重ねるごとに進化を続ける《Memorial Rebirth 千住》。今年は3回のプレイベントも開催している。6月に千住双葉小学校、8月に千住緑町商店街で、「大巻電機K.K.」が、新たな仲間をつくりながら、操作の腕に磨きをかけている。第3回は、9月13日に千寿第八小学校で実施の予定だ。また、今年は新たに衣装づくりチームも発足した。反物や古着からアイデアをふくらませ「しゃボンおどり」に華を添えようと、大人もこどもも一緒に活動中だ。「大巻電機K.K.」も「しゃボンおどり衣装づくりチーム」もメンバーを募集中。

 最後に、「今年は、今までとは違う、本気でアートな『メモリバ』に」と意気込む大巻さんに、今年の夜の「メモリバ」の見どころを聞いた。「人間の力ではつくれないような自然の中の大きなうねりや、永遠性のようなものが立ち現れるといいなと思っています」

 10月11日(日)、足立市場に数千人の人を迎える「メモリバ」。その意気込みはヒートアップを続けている。


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