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執筆者の写真音まち千住の縁

「音まち」は大事な遊び場|胡舟 ヒフミ

更新日:2019年12月2日


▲野村誠 千住だじゃれ音楽祭「千住の1010人」で鍵盤ハーモニカのパートリーダーを務める胡舟さん。


プロフィール

胡舟 ヒフミ|こしゅう ひふみ

北海道出身。父親の仕事の関係で引越しが多く、道内のあちらこちらに住んだ。武蔵野美術大学(短期大学部)で空間演出デザインを専攻。大学では演劇に熱中していたが、卒業間際に大きな怪我をしたことがきっかけで、衣装やメイク、照明、音響、制作など舞台の裏方を経験。その後化粧品販売をしながらデザイン事務所で働き始め、フリーを経て現在は広告代理店でグラフィックデザイナー。趣味で踊りや朗読、「音まち」では、ヤッチャイ隊だけでなく事務局で野村企画「千住だじゃれ音楽祭」の担当。




きっかけは銭湯の音楽会 ある日、知り合いの女性から突然電話がかかってきて、「胡舟、踊りやってたよね?踊りやってるなら水着とか大丈夫だよね?」って言われて(笑)。「とにかく見学だけでもいいから来てみて」と彼女に誘われるままに行ったのが、2012年1月の「野村誠ふろデュース・お風呂の音楽体験会」だったんですね。銭湯の湯船で「だじゃれ音楽」を演奏する企画でした。会場には、すでにやる気100%の水着姿の彼女がいて(笑)。とまどいもあったけれど参加してみたら面白かったので、その流れで3月の「風呂フェッショナルなコンサート」に出たんです。そのとき、デザインの仕事をしているという話をしたら、当日の「プログラム」ならぬ「ふろグラム」を頼まれた。続いて5月の「千住だじゃれウォーキング」のパンフレットもつくることになりました。それが「音まち」との関わりの転機でした。


部活みたいなもの そのうち「音まち」の「広報戦略会議」にも参加するようになり、野村誠さんの企画の事務局スタッフをやらないかと誘われ、8月から入ることになって。事務局をやるなら「音まち」の活動の最前線「ヤッチャイ隊」にも、と思って登録したんです。当時、ヤッチャイ隊のメーリングリストは「飲み会情報」だと聞いて、それは楽しそうって(笑)。正直、ヤッチャイ隊の実体はよくわからなかったのですけれど。

「音まち」の活動は、演奏者としても楽しいし、事務方としては楽しいだけでなく、自分の経験としても残っていく。両方やれる場というのがありがたいです。私にとって「音まち」は、部活みたいなものかな。仕事じゃないけれど責任はある。大変なこともあるけれど、自分が大事にしている遊び場で、行けば楽しい。そんな場所でしょうか。最近のヤッチャイ隊は、積極的に動く人たちがどんどん出てきて、実はちょっと取り残され感を覚えているところなのですが、これからヤッチャイ隊内部でもっといろいろな活動ができるといいなと思っています。

「音まち」の広報物は、その後も野村企画や子供向けのチラシなどのでザインをしています。アート寄りのかっこいいチラシをつくってくれる人はほかにいるので、どちらかというとちょっとベタに、自分が音まちのことを何も知らない人だったら、という視点でどうすれば伝わるかを考えてつくっています。これは事務局の人としてやっていることなのか、ヤッチャイ隊だからやっているのか自分でもよくわかりません。

常にやりたいこと、興味のあることしかやれないし、やらないので、楽しんではいますが、金銭面では納得できない気持ちもあります。プロとして仕事でやっている「デザイン」ですが、「音まち」ではボランティア。プロの人的資源をボランティアの名のもとにタダで使う。大学が関わっているとさらに、教えてやっている、育ててやっている、といった目線も感じるんです。それには違和感があるし「音まち」に限らず、アートプロジェクトの課題なんじゃないかと私は思います。


千住のこと、もっと知りたい 昨年、足立区の柳原でできたつながりから、地元の神輿(ルビ:みこし)を担がせていただいたのですが、生まれて初めての新鮮な体験でした。商店街のおじさんやおばさんとのつき合いにも慣れていなくて。でも休憩時間に話をさせていただきながら神輿を担いでまちをまわるうちに「音まち」拠点の「音う風屋」は当初の予定ではルートになかったけれど、「ここまで来たんだから『音う風屋』にも寄ろう」と言ってくれた方がいて、音う風屋の前を通ってくれた。「音う風屋さん、音う風屋さん」って神輿をもみながら言ってくれて、嬉しかったですね。まちの人とまだまだ対等ではないと思うけれど、ちょっとずつ近くなっている感じがうれしい。

2013年1月の「千住だじゃれ音楽祭野村誠ピアノソロ・コンサートだじゃれ合戦つき」では、千住在住の書家の方に対戦で出ただじゃれを大きく書いていただいたのですが、その先生が書を掛け軸にしてプレゼントしてくださったんです。うれしかったです。まちの人と関わりがある、まちの人が何かしてくれようとする。そういうまちは、私にとって、千住だけですからね。

千住、好きですよ。いいまちだなあと思う。みんなにもっと知って、来てほしいです。私自身も、まだまだ知らないことが多いのでもっと知って、「このまち面白いんだよ」って胸を張って人に勧めたいなって思います。「音まち」は、今はまだイベントの一つひとつが「点」ですが、だんだん人のつながりもでき、「面」になってくるといいですね。そして「音まち」自体が、まちを構成する一要素、まちを彩るひとつになってくるといいなと思います。




取材・構成=足立区シティプロモーション課

インタビュー・執筆:舟橋左斗子 発行日=2014年3月31日

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