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  • 執筆者の写真音まち千住の縁

路地と旧家で大人のかくれんぼ|阿部吉光


プロフィール

阿部吉光|あべ よしみつ

静岡市出身。足立区島根在住。結婚により奥様の実家がある足立区に本籍を移す。株式会社ヤクルト本社に在職中、ブラジルに4年、韓国に13年派遣され、多くの修羅場を乗り切る。現在は週4日、障害者送迎の仕事を手伝い、週1日は近くの住区センターで健康麻雀(飲まない・吸わない・かけない)を楽しんでいる。2015年度の千住・縁レジデンス 友政麻理子「知らない路地の映画祭」で2本の脚本を手がけた。2016年度は新作「かくれんぼ」の制作に奮闘中。


大人のかくれんぼを映画に


 脚本っていうのは自分の場合、できるときにはポーンってできちゃうんですよ。できないときには何をやってもできない(笑)。今回つくる映画「かくれんぼ」は、まち歩きの後、仲町の家でみんなと話して帰って、すぐにポン!ってできちゃいました。この家で、特にあの不思議な屋根裏でかくれんぼさせたら面白いだろうな、廊下も座敷わらしを走らせたら面白いだろうなって。法学部で刑法を専攻していたこともあって、もともとサスペンスやSF的なものが好きで、自分が一番しっくり来るのは「世にも奇妙な物語」的なものなんです。その後、メンバーのメーリングリストで、行きつけのバーを使わせてもらえるかもしれないって話があって、バーからこの家まで千住の路地を通って、まちなかのかくれんぼもすることで、摩訶不思議な感じを出したいなって思いました。大人がかくれんぼするってこと自体がありえないので、どういう設定なら自然に連れてくることができるかなと。


2人の喧嘩が心配で心配で


 4年ほど前に北千住駅前のカルチャーセンターで脚本教室に参加したんです。自分の脚本を書きたいという強い思いはなくて、定年後でしたので、好きな映画やテレビを見るときにもっと楽しめるようになるんじゃないかなと思いまして。でも勉強したら逆にアラばかり目につくようになりました(笑)。そのときは1時間もののサスペンスドラマを1本書いたら憑き物が落ちたというか(笑)。ですが、脚本という紙切れから立体的に映画が立ち上がってくるって経験はしてなかったので、1年前に区報で自主映画制作プロジェクトの募集記事を見つけて「あー、面白いのがある」とピンと来た。アルツハイマー対策です(笑)。そんなことでもないと、退職して家にいて、まったく頭使わないですからねえ。

 そのときは、本当に映画できるのかなって思いましたが、できましたね。それはすごいと思いました。まとめていったアーティスト・友政さんの力と、たこテラスや音う風屋(おとうふや)っていう拠点があったことが大きいと思います。楽しかったこと? それはユニークな仲間と巡り合えたってことです。

 多国籍なチームだったので、その場で英語のシナリオを書き直したりして、頭の訓練にはなりますよね。戦場みたいだった、とも言われますけれど(笑)。マイペースで場の雰囲気でどんどん変えてしまう監督と、かっちりとやりたい助監督の間で、2人が喧嘩しないか心配で心配で、調整役をしてました。喧嘩でこの映画が空中分解してしまうのが一番怖かったから。

 ヤクルト本社で定年まで働きましたが、長く海外にいたんです。ブラジルと韓国と、日本から遠い国も近い国も経験して根性はつきましたね(笑)。


どんどん変わっていきます


 撮影してるとき、まちのみなさんは好意的でしたよ。「何やってんの~?」と話しかけてくれたり。大川町では、ここ曲がれるんだとびっくりするような路地があって面白かったです。柳原キデンキ(裸電球の街路灯)は、近所のおばさんが「あんなの、暗くて邪魔で」なんて言ってましたけど(笑)。昔と今が調和してるのがいい。まあ私らが勝手に言ってることですが。ひらめきにつながるものがたくさんありますね、千住は。でも、そんな健全な千住だけを出すのでなく、裏の部分や、実はコミュニティに出てこないご高齢の方や引きこもりの人がいることも表現したいって監督は言っていて、「社会からのかくれんぼ」ですね。みんなと話すうちに、どんどん変わっていきます。さあどうやって社会性を盛り込むのか、今のところはなかなかまとまらないですね。でも言われたことを直せば、どんどん良いものになっていくのは確かです。

 2年目ということで、前回大変だったキャスティングも今回はイメージできてますし、全体に「何とかなりそう」な感じです。年齢も普段やってることもバラバラのメンバーですが、「何か面白いことやろう」って感じだけは共通してます。決して「映画を作るために集まるんだ!」って感じはない。本当は、みんなでぐだぐだ飲んでるのが一番面白いですよ(笑)。


(インタビュー・執筆:舟橋左斗子)

 

【2017年1月発行号掲載】

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