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執筆者の写真音まち千住の縁

小さな電子音楽家 二人三脚で音を追いかけて |鈴木椋大・鈴木智子




プロフィール 親子アートユニット「りーるとぅりーる」 鈴木椋大・智子|すずき りょうた ・ともこ

今、電子音楽界で最も若いクリエイターのひとりとして注目されている中学1年生とその母。音や映像作品の制作、SNSの発信も続けている。「CREATIVE HACK AWARD 2016」で、作品「みえない音」がソニー特別賞受賞。レゴブロックの大会「ブリックマスターコンペ2017」でも優勝するなど活躍めざましいが、学校の勉強はちょっと苦手で、友達との間には「国境線がある」と本人談。タウンレコーダーとして「電車エレクトロニカ」を制作中。


母ちゃん、風がバイオリン弾いてる

智子:毎日フクロウの鳴き声が聞こえる、千葉の里山近くで暮らしています。週末になると音にまつわる活動に出かけて、千住周辺にも毎週のように来ています。 椋大:俺が、音楽に母ちゃんを引きずり込んじゃったんだよね。 智子:私は野外教育をやってきたので、椋大とも自然の中で遊んだりしてきましたが、音に特化したことはないんです。赤ちゃんのときから「音」に敏感な子で、窓の格子が風で鳴っているのを「母ちゃん、風がバイオリン弾いてる」と言ったり。4歳のころからYouTubeでYellow Magic Orchestra(YMO)を追いかけるようになり、2011年、私が連日ネットから参加していた、バルーンでスマートフォンを宇宙へ打ち上げる「SPACE BALLOON PROJECT」で、Open Reel Ensemble※1の音に衝撃を受けて。オープンリールという大型の磁気テープを使った録音再生装置を、早送りしたり巻き戻したり、自在に操って音をつくるんです。 椋大:オープンリールは、音を直接手でゆがめられるから楽しい!「こんにちは」って吹き込んだ声を、リズムをつくって「こっ、こっ、こんにちは」って聴こえるようにしたり(笑)。 智子:今、椋大はiPadでも作曲しています。 椋大:音の師匠がいるんだよね。 智子:大野松雄※2さんね。この世にない音を生み出した人と聞いて、映画「アトムの足音が聞こえる」を観たんです。その後すごく気になっていたところご本人に会えて! 椋大:偶然。 智子:椋大が大好きだってお話ししたら、孫のような弟子?にしてくれて(笑)。背中を見て育ってるような感じです。80歳を過ぎてもオープンリールやパソコンでつくってるその音が、凄くって。椋大は「負けられない、僕もやる」と、9歳のとき作曲を始めたんです。 椋大:大野さんと一緒に舞台に立つのが夢なんだ。


あれ? もしかして!ってことばかり

智子:私たち、音まちでは2014年春、足立市場で開催された大友良英さんの「千住フライングオーケストラ 縁日」に出てるんです。「いろいろ屋台」に出店しました。椋大は、市場のターレーという乗り物が大好きなので、その荷台を屋台にするって聞いて、やろうやろうってなって。もう3年以上経っちゃったんだね。 椋大:歳、とった~(笑)。 智子:「フライング」からヒントを得て、ハンガーに輪ゴムをくっつけてブンブンまわして鳴らす楽器や、牛乳パックでカズーっていう楽器を手づくりしたり。ハンガーは、近くのクリーニング屋さんで、たくさんいただきました。 椋大:面白かった。知らないお客さんからクレープもらったり、ほかの屋台を回ったりもしたね。 智子:その後、野村誠さんの千住だじゃれ音楽祭 「千住の1010人」や、「子どもの音まち」の手作り楽器ワークショップ、大巻伸嗣さんの「Memorial Rebirth 千住」の音楽隊にも参加しました。今回、アサダワタルさんの「千住タウンレーベル」の募集を知ったときも、何か自分たちにぴったりだなって思って。 椋大:始まってみたら、あれ? もしかして!ってことばかり(笑)。俺が初めてつくった曲が、実はアサダさんとつながってたんだ!ってわかったりね。びっくりだよね。


表向きの北千住駅しか知らなかった

椋大:「まちの音を録音する」って聞いて、すぐに思いついたのが電車。 智子:東武鉄道本社にインタビューさせてもらったのが印象的で。北千住駅の高架化の映像を見たら、300人くらいの人の手で、ひと晩で線路を切り替えるんです。よいしょ、よいしょって。 椋大:もっと近代的かと思っていたら、ほんとにたくさんの苦労と汗と魂が詰まってできあがったんだって、見方が変わった。 智子:私たち、表向きの北千住駅しか知らなかったんです。千住タウンレーベルを通して、普段会えない人と会えたり話を聞けたり、人といきなり音でつながるところが面白い。それを「レコード」にするんですよ。 椋大:いろんな話を聞いて「昔」の音風景をつくりたいって思った。8月から東武鬼怒川線に蒸気機関車が復活するので、その音を使えば、昔を懐かしんでくれる人もいるかなって。北千住駅の昔から今、今から未来、っていうテーマでこれからも続けてやってみたい! 智子:もんじゃ焼きのような千住の「ぼった」をテーマにしている人もいて、みんなで食べにいって、鉄板のジュージュー、カンカンいう音を録ったり。ほかのメンバーの作品を聴くと、千住ってこういうところなんだって発見があります。 椋大:交通の便が発達している一方で、蔵や銭湯とか、東京なのにそういう古いものが残っていて。新しいものと古いものが混ざり合って、千住は「都」っぽい。(一同笑)



(インタビュー・執筆:舟橋左斗子)


※1 Open Reel Ensemble:旧式のオープンリールテープレコーダー複数台を楽器にして、リールやテープに直接手を触れながら演奏する、和田永を中心としたグループ/プロジェクト。 ※2 大野松雄:音響デザイナー。TVアニメ「鉄腕アトム」の効果音を担当し、アトムの足音やビームの音などをつくった、日本の電子音響の草分け的存在。


 

【2017年9月23日発行号掲載】





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