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  • 執筆者の写真音まち千住の縁

だじゃれ音楽、それぞれの部屋からオンラインの海へ漕ぎ出す

更新日:2021年8月27日

アートライター=白坂 由里




 コロナ禍でイベントの中止を余儀なくされつつ、10年目の灯が消えないよう活動方法を模索してきた「音まち千住の縁」(通称:音まち)。そのなかで、音まちYouTubeチャンネルから「アーティスト・クロストーク《オンライン》」が配信されることになった。

 その第1弾として、8月5日には千住だじゃれ音楽祭ディレクターで作曲家の野村誠が、アーティスト・コレクティヴ「Nadegata Instant Party」(中崎透・山城大督・野田智子)を迎えてクロストークを行った。「ひょうたんから駒が出るようなはなし―まち、人を動かす、名づけられない『作品づくり』について―」と題し、参加者とのかかわりのなかで想定を越えていくアートプロジェクトをどのように進め、記録に残していくかなどが話し合われた。「音が同じだけで無関係のものがつながってしまうだじゃれを象徴とし、違う意見の人たちも同じ場所にいられるような場をつくりたい」と2011年にスタートした千住だじゃれ音楽祭。「ひとりでつくっていると自分の枠を越えられないので、自分の価値観をぶち壊してくれるような、違う価値観と出会いながら未知の音楽を体験したい」という野村の思いや、「ワークショップなどで生まれた曲は“やわらかい楽譜”という形で残している」という話などが印象に残った。


 当初、2020年5月31日には市民参加型コンサート「千住の1010人 in 2020年」が予定されていたが、延期、そして中止を経て、方向性を変えたプログラム「千住の1010人 from 2020年」を始動することになった。オンラインならではのセッションを実験し、積み重ね、2021年3月にそれらの音や映像を編集して音楽作品をつくりあげることを目指す。

 10月31日には「世界だじゃれ音Line音楽祭 Day1」を開催。10時10分から20時20分まで、全部で11プログラムが音まちYouTubeチャンネルから配信された。市民メンバーが集う「だじゃ研」こと「だじゃれ音楽研究会」が培ってきた企画のノウハウや、Zoom演奏の研究成果が、一般参加者及びゲストとともに発揮された。

 遠隔でも一緒に演奏できるオンラインの長所をいかして、多彩なゲストが次々と登場する。「倍音の魔術師ビッキーと『掃除機の吸いそう楽』」と題して、倍音音楽家・尾引浩志によるホーメイやイギルの演奏と、参加者それぞれの家庭にある掃除機の音とのセッション。お昼どきには、2014年に千住だじゃれ音楽祭が千住に招聘した民族音楽学者のアナン・ナルコンがタイから登場、みんなでヌードルをすすり、茶碗を叩く『ヌードル・ノイズ・オーケストラ』を。同じく2013年に招聘したインドネシアの作曲家・メメット・チャイルル・スラマットとは『トントン・ストーン』と題して石を楽器とし、ジャワ舞踊家の佐久間新も共演。野村がレジデンス経験のある香港のi-dARTとのセッションや、Asia Pacific Community Music Networkからはピート・モーザーらも参加し、地域や国を越えて即興演奏が繰り広げられた。




 他にも発泡トレイに輪ゴムを回しかけ、弦を弾くように演奏する手づくり楽器「レギオン」を池田邦太郎と演奏。身近なものの用途や意味をずらして楽器にし、詩的な時間も生まれた。詩人の上田奈代の詩の朗読と、参加者が本の好きなところを読む声、本を開いたり閉じたりする音が雨だれのように折り重なった『ほんまにブックビッグバンド』。大田智美が弾くアコーディオンの蛇腹の開閉に合わせて、参加者がそれぞれの家のカーテンを開閉する『カーテンの開閉式』も、誰でもできるシンプルなアイデアから、参加者同士の一体感と美しい風景が生まれた。





 野村は終始、ゲストやだじゃ研、参加者たちから出る音に反応して、ピアノや鍵盤ハーモニカで音を交えたり、メロディーを紡ぎ出していったり。演奏者の一員かつコンダクターとなり、演奏者たちの自発性に任せながら緩やかにまとめていく。最後は、千住だじゃれ音楽祭の原点である『集まれ!風呂フェッショナル』(※1)を歌い継いだ後、タイと日本の影絵の共演や、ぬいぐるみとのオンラインパレードを実現したジンタらムータのクラリネットやチンドン太鼓など、すべての出演者が参加し、民族音楽や芸能、現代音楽、多様な言語が融合する大団円に。こどもからお年寄りまで世代を越えて、また楽器経験や障がいの有無にもかかわらず、それぞれの部屋から互いの音に耳を澄ませる音楽づくりを初めて体験した。

今後もオンラインイベントが開催される予定だ。ぜひ視聴、そして参加して楽しんでほしい。



※1|野村誠による「千住だじゃれ音楽祭」第1弾企画。千住の銭湯「タカラ湯」を舞台として、公募で集まった演奏者とともに、風呂桶とお湯で音楽を奏でた。



※今後のオンラインワークショップの情報は特設Facebookから








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