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執筆者の写真音まち千住の縁

千住・縁レジデンス|友政麻理子「知らない路地の映画祭」



「映画を撮ってみたい」

そんな夢が叶う。

参加者が主体となり、制作方法からつくるプロジェクト。

和やかな現場を覗いてみよう。



 挨拶などの「型」は最初からあったのではない。違う人間同士がなんとか関わりを持とうとするコミュニケーションの過程で築かれてきたのではないだろうか。

 「千住・縁レジデンス」で、友政麻理子は映像作品《お父さんと食事》を制作する。見知らぬ男性と友政が、一回の食事の間だけ親子になる努力をする。お互いが抱く「親子」のイメージがすれ違いながらも、人生やまちの歴史なども見え隠れし、その親子の「型」が束の間現れる。金沢やアフリカのブルキナファソなど各地で行われ、千住でも実施する。

 もう一つ、「知らない路地の映画祭」と題し、千住の人々と自主映画を制作するプロジェクトもスタートした。「従来の映画のつくり方(型)を真似るのではなく、映画以外のことから始めたい。映画づくりに関して何も知らなくてもいいんです」。7月〜10月に新潟市で開かれた「水と土の芸術祭2015」では、ロケ弁をつくる夫妻がチームの要になった。

 「得意技や個性を自分で引き出せるようになると、映画に関しても意見が言えるようになるんです。遠慮気味だった女子高生が、恋の映画を監督すると言い出して、それまで女子高生と縁のなかったおじさんたちが『それじゃ恋は生まれない』とリアリティを追求したり(笑)」

 千住では、路地を舞台とする。身近なまちも知らない場所として捉え、映画の中に実在のまちの名前は入れない。3月には完成作を上映する映画祭を開催。友政は、映画制作過程のドキュメンタリーも撮影する。

 集まった人々は、実に多彩だ。千住のおやじバンドのライブをビデオ撮影している人。シナリオや映像ワークショップの受講経験者、かつて映画字幕を書いていた人もいれば、子供と一緒に何かをしたいというお母さんもいる。千住に住む香港からの留学生と、英語・日本語チャンポンで話が弾む。

 ロケハンを兼ねて路地散策もした。旧日光街道の宿場町通り商店街や柳原などを歩く。友政がコンペ前のリサーチで訪ねたリビングショップの店主に、映画館跡を記した自作マップをいただく。昭和10年〜40年代の全盛期には、春日部や取手からも観客が押し寄せたものだが、今は商業ビルや駐車場などになっている。

 観光的なスポットではなく、知らない「千住」を発掘するために、友政やスタッフが案内するのではなく、参加者の中で先頭を変えながら小路へ入っていく。好奇心が頼りだ。路地では近所に住むおばちゃんと、神社では落ち葉掃きのおじさんとしばし井戸端会議。空家や五叉路に出くわす。商店街で鍋の材料を書い、親睦会も行った。「先が見えない路地は面白い」「路地で出会う人たちに映画に出てほしいね」。一見。無関係なこともシナリオに結びつく。

 現在もまだまだ参加者を募集中。「空気を読まない人、素人批評家も歓迎。場を和ませる人や世話好きのお母さんも待ってます!」。


白坂ゆり(ライター)

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