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  • 執筆者の写真音まち千住の縁

千住仲町がざわざわしている


居間 theater「4人姉妹の家びらき・夏」(2018年)

写真=冨田了平



千住仲町がざわざわしている


このごろ何やら、千住仲町がざわざわしている。

そもそも千住が住みたいまちだの穴場なまちだのと注目度が急上昇する中で。

さらにいえば、東京は今、西側より東側がオモシロイよね、という風の中で。

江戸時代から昭和にかけて、ものすごく栄えたまち。千住仲町。

変わるもの。変わらないもの。

変化を受け入れながら、今、動き始めている千住仲町を歩いてみた。



 千住仲町にミリオン座という名の映画館があったころ。

 「ミリオン通りは千住でいちばん賑わった商店街だったんだ。ものすごい人だったよ。映画館あり、ボーリング場あり、サウナあり、パチンコ屋は2軒もあって、銭湯もあった。もちろん肉屋も魚屋も八百屋も寿司屋も…」と回想するのは、昭和31年開店の老舗うなぎ店まじ満のご主人。日本の多くの商店街と同様、昭和30〜40年代をピークに、娯楽施設も商店も徐々に少なくなり、住宅や駐車場に変わってしまったところも多いが、「今、ミリオン通りは、追い風だね」とご主人は言う。昔から変わらぬ美味いうなぎと酒飲み泣かせの絶妙なつまみを出すまじ満は、SNS時代を迎え客足が伸びた。でも、それだけではない。「藝大ができて仲町の家ができてBUoY(ブイ)ができて、このごろ新しいお店も増えて、何かあると人が通ってくれるようになって、商店街としては、プラスになってる」と言う。



仲町周辺の新顔


 東京藝大の音楽環境創造科が、千住仲町ミリオン通りの入り口、もと千寿小学校の跡地に引っ越してきたのが2006年。その藝大と一緒に「アートアクセス あだち 音まち千住の縁(音まち)」というまちなかアートプロジェクトを始めたのが2011年。

 そしてしばらく空き家だった「仲町の家」を音まちでお借りするようになったのは2016年夏。2018年9月からは、千住の文化サロンとして毎週土日月・祝日オープンしている。以前ボーリング場とサウナだったが長年廃墟となっていた1964年築のビルの2フロアをリノベーションして、2017年夏に生まれたアートセンターが「BUoY(ブイ)」。

 これら3つの施設は、いずれも昔は別の用途で使われていたもので、繁栄してきた千住仲町の空気を伝える存在である。さらにここ数年、千住仲町に個性的な飲食店などがぞくぞくとオープンしているのも興味深い。



発表する場所を求めて


 東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科の大学院生、山下直弥さんは、ウィーンに留学していたとき、ヨーロッパではコンサートホールなどの場所にしばられない音楽活動がさかんに行われていることに感銘を受け、帰国後も音楽とまちの関係について研究を重ねてきた。その中で仲町の家という場所に出会い、「THE鍵KEY」「静かな家」の2作品をプロデュースしてきた。「藝大生や創作活動をしている人は発表する場所を求めているので、仲町の家やBUoYの存在は大きい。仲町の家は面白い場所だなと思います。たとえば家族の物語を上演するとき、柱のキズや床の凹みなど、人が住んでいた痕跡が物語の中でどんどんリアルに感じられていく。あの場所の持っている物語性をどう読み替えるのか、何百通りもあると思う」。


山下直弥さんのロングインタビューはこちら



下町コミュニティ

 

 「猫がね、迷子になってたんです。そしたら近所の人たちが集まって飼い主を探して。私もポスターを作って(笑)」と話すのは、千住仲町に暮らす、東京藝大音楽環境創造科助手の東彩織さん。藝大で学んできたが、千住に住んでいる友達が多く、何かあれば泊まっていたので、近くに住めば一石二鳥と引っ越してきた。同じく東さんが活動するパフォーマンスプロジェクト「居間 theater」のメンバーで、東京藝大大学院国際芸術創造研究科助手の山崎朋さんは藝大入学と同時に千住仲町に暮らし始め、10年以上をこのまちで暮らす。「何でも近くで揃って暮らしやすくて」。商店街の小さなお店や、町会の夏祭りに晩ご飯の途中で「ちょっと出かける」なんてことができる距離感や下町コミュニティも気に入っている。

「居間 theater」は、2018年に仲町の家で「4人姉妹の家びらき・夏」を上演し、好評を博した。「大黒湯の露天風呂でミーティングしたり、商店街のお店ご飯食べたり。何ならトイレに帰ることもできる距離で、普段の創作活動とは異なる体験ができて面白かったです」。(東さん)


東彩織さんと山崎朋さんのロングインタビューはこちら



こだわりのある人に来てほしい














 ミリオン通りに3年前に開店した花屋小梅のご主人は「仲町の家やBUoYは花屋の商売にはそれほど関係はないけれど、例えば下北沢もそうですが、そういうものがあると外からも若い人が集まって、イメージが変わるのでいい」と言う。「北千住はこのごろ人気で駅周辺は家賃が高い。このあたりは少し離れるので家賃もやさしい。人通りは少なめだが落ち着いて商売したい人には向いてる。やる気ある人やこだわりある人に来てほしい。そうすると、もっと面白くなるんじゃないかな」。千住仲町の商店街が、まちが、今、少しずつ動き始めている。


(インタビュー・執筆:舟橋左斗子)


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